オペ室看護師くらげです。
今日は「ボスミンの〇〇倍希釈」についてお話ししていきたいと思います。
みなさんは術中に先生からいきなり「◯◯倍ボスミンちょうだい!」って言われたこと、ありませんか?
ボスミンの指示って「倍」と「%」があって、急に言われると頭が混乱して焦ります…。
一瞬頭が白くなって、計算どうするんだっけ…?となった経験がある人もいるはず。
今回はこのややこしすぎる「倍希釈」について、できるだけわかりやすく解説していきたいと思います。
倍とパーセントは全く違う
まず、一番大事なのは「〇〇倍」と「〇〇%」は全く違うということです。
例えば、先生から「ボスミン50万倍で」と言われたときに、「ボスミン0.05%でいいですか?」なんて聞いてしまうと、手術に夢中な先生は「うん?…。」と微妙な反応が返ってくることがあります。
看護師側では製剤としてあるものをオーダーされるのが普通だと思いたくなる心理が働いて同じ”5”がつくので、
先生の反応は微妙だけど、「”うん”って言ってたし!いいか!」とそのまま出してしまうとめちゃくちゃ危ないです。
こういうときは、少し頭を冷静にして考えてみましょう。
0.05%のボスミンは、何倍ボスミンになるのでしょうか?
まずは基準となるボスミンの濃度を知ろう
術中に使用されるボスミン生食というのは基本的にじわじわと出てくるような出血に対する止血目的で使用されます。
使い方としてはガーゼに染み込ませて、出血部位においておく感じです。
ボスミンは血管を収縮させる作用があるので、末梢血管を締めて出血を抑えます。
基本的には血管内に注入するわけではないので、循環動態への影響は少ないですが濃度計算を間違えると大変なことになります。
過去の医療安全情報でも濃度計算を誤って、循環動態へ大きな影響を出した事例があります。
微量でも高濃度のボスミンが血管内に入ると、心拍数や血圧が高くなり、最悪の場合は心停止にもなります。
医療事故情報収集等事業 医療安全情報 No.108 2015年11月「アドレナリンの濃度間違い」
ボスミンは心停止時に使用する薬剤なので、効能を考えると分かりやすいですね。
ところで、みなさんはボスミン1Aの濃度って知っていますか?
Pmadで検索すると「一般名:アドレナリン」として販売されている医薬品は以下のものがありました。
- ボスミン注1mg
- アドレナリン注0.1%シリンジ「テルモ」(1ml)
- エピペン注射液0.15mg/エピペン注射液0.3mg
- ボスミン外用液0.1%
ボスミン生食を指示された場合はボスミンを持ってくると思うので、
- 「ボスミン注1mg」
- 「ボスミン外用液0.1%」
のどちらかを生理食塩水で希釈して使用すると思います。
ここで重要なことは2つあります。
それぞれのボスミンを倍で表現した場合はいくらになるのか
外用薬で良い場面か
ということです。
まず、”倍”として表現される場合のアドレナリンの濃度は原液です。
調べてみると詳細な情報はあまり出てきませんが、
”そこで医療現場ではアドレナリンの希釈倍数間違いは患者に与える影響が大きいことから、ボスミン®注1mgおよびボスミン®外用液0.1%はアドレナリン原液の1,000倍希釈液であることを伝える呼び方として「1,000倍ボスミン」という呼び方がなされることがある。”
医療事故情報収集等事業 第33回報告書 (平成25年1月~3月)2 個別のテーマの検討状況【3】アドレナリンの希釈の呼称に関連した事例
という記載があります。
つまり、「アドレナリンは1mgの1000倍である、”1g(1000mg)を基準とした倍希釈”として表現されている」ということです。
いろいろとややこしいことを書きましたが、覚えることはただ一つ。
「1mg/1ml(0.1%)のボスミン1Aは1000倍希釈液である」ということ。
ここで先程の質問に戻りますが、
0.05%というのは、0.1%を2で割っています。
数式で表すと、
1/1000÷2=1/2000
です。
つまり、0.05%ボスミン=2000倍希釈のボスミンということになります。
では、逆に倍希釈から%に直してみましょう。
50万倍ボスミンを1000で割ると、ゼロが3つとれるので、
500000/1000=500となります。
つまり、0.1%の製剤を500倍に希釈しているので、小数点を2つずらして、5で割ると、0.0002%となります。
ということは、50万倍ボスミンのオーダーに対して0.05%ボスミンを準備すると、その濃度差は250倍となり、とんでもなく濃いものを出すことになります。
実践に活かすためには
さて、ここからが本題です。
倍と%は全く違うということをお話してきましたが、
臨床で活かすためには思考のスピードをできるだけ簡略化して、短い時間で準備できるようにはどうするかを考える必要があります。
一番簡単なのは暗記することですが、こういう濃度計算をするときに丸暗記だけするのは危険です。
人間は記憶間違いをする生き物なので、丸暗記に加えて検算する方法を覚えておいたほうが安心して準備できます。
検算するために覚える必要があるのは、先程の”ボスミン1Aは1000倍希釈液”ということだけです。
試しに、これを使って検算してみましょう。
自分が丸暗記している濃度では、
「10万倍ボスミン=ボスミン1Aを生食100mlで薄める」
があります。
これが正しいかどうかを確かめるためには、10万を基準である1000で割ります。
言葉でいうとなら、10万倍ボスミンを作るためには、このボスミン1Aを何倍に薄めればよいのかという問いです。
100000/1000=100となるので、答えは100倍に薄めればよいという結果になります。
手元に、計算機があれば暗算よりも確実ですが、裏技があります。
1000で割るというのはゼロを3つ消せばよいのです。
つまり、手元にあるメモに”100000”と書いて、みぎから順にゼロを3つ消すと、答えが100になります。
これで計算は完了です。
これを覚えておけば、2000倍でも5000倍でも20万倍でも応用が効きます。
困ったときは試してみてください。
まとめ
ボスミンの希釈指示は「倍」と「%」がある
- 急な指示で混乱しやすい
- 倍と%は全く異なる概念
ボスミンの基本的な使い方
- じわじわした出血の止血目的
- ガーゼに染み込ませて使用
- 高濃度が血管内に入ると非常に危険
計算ミスの危険性
- 50万倍ボスミンと0.05%ボスミンの濃度差は250倍
- 濃度計算ミスが重大な医療事故につながる
実践に活かす方法
- 丸暗記よりも「検算」できる方法を習得
- 基準「ボスミン1A=1000倍希釈」を活用
- 計算のコツ:「ゼロを3つ消す」簡易検算
具体例(検算の仕方)
- 例:「10万倍ボスミン=ボスミン1Aを生食100mlで希釈」
- 10万÷1000=100 → 100倍に希釈が正解
- 困ったときはゼロを消して計算する方法を活用
ボスミンの倍希釈について、しっかり理解して安全に対応できるようにしましょう!
以上、オペ室看護師くらげでした。