看護師くらげです。
今回は、THA(人工股関節全置換術)の基本的な流れについてお話しします。細かい筋肉の話などを省き、特に機械出しがこれから手術を覚える際に役立つようなざっくりとした手術の流れを説明していきます。
1に準備!2に準備!
まず、何より大切な準備から!
以前も触れましたが、手順の理解や機械を順番通りに並べることが大事です。
スピーディーな器械だしは言わずもがな、手術の流れが良くなります。
さらに、自分だけの工夫を加えるとよりスピードが出ます:
- レトラクター類の整理: よく使うものとそうでないものを分ける。場面によって使用が変わるので、向きを変えて一目見れば把握できるようにする。など
- 先端形状を覚える: さらにレトラクターには取手の部分に番号や名前が書いてある場合がありますが、先端の形状で判断できるように覚えておくと、かなりスピードが上がります。
ほんっとに準備って大切で、準備段階でしっかり整えておけば、手術中にスムーズに対応できます。
消毒とドレーピング
手術室に入ったら、消毒を行います。
整形外科ではイソジンを使う施設が多いですが、施設によっては違う場合もあるので、先輩に事前に確認しておきましょう!
その後はドレーピングです。
ドレーピングの流れ
先生によって手順や圧布の枚数が異なる場合があるので、それぞれの違いを覚えておきましょう。
また、THAでは「後方系アプローチ」か「前方系アプローチ」によって消毒の範囲が変わります。
調べるまであまり深く理解していませんでしたが、THA・BHAのアプローチ方法は大きく6種類あるようです。
詳しく知りたい方はこちらのブログを見てみてください。
実際に器械出しをするときには常勤の先生の方法を熟知すればよいので、すべてを理解する必要はないと思います。
自分の経験ではアプローチは大別すると2つに分けられます。
後方系アプローチは基本、側臥位。前方系アプローチは仰臥位が多いです。仰臥位の場合は両足を消毒します。
前外側アプローチは側臥位ですることもあるようですが、執刀医によって考え方は違うので自分の施設はどうなのか確認してみてください。
ドレーピングって意外と重要で、実際に器械出しをしてみると感じると思いますが、ここがうまくいくと手術全体の雰囲気が良くなる気がします。
なにごとも”始まり”って大切ですよね。
スタートがスムーズであれば、手術全体の調子も良くなります。
最近は前方系アプローチが増えていますが、今回は基本的な後方系アプローチについて説明したいと思います。
前方系アプローチと後方系アプローチは皮切や展開が変わりますが、手術の全体的な流れは大きく変わらないので、どちらか覚えておけば応用で覚えやすいはずです。
展開(後方系アプローチの場合)
手術が始まりました!
まずは皮切、展開です。
展開が終わるまでは以下の機械を準備!
- コウピン、電気メスメス、メッチェン、エレバ
- 開創器はゲルピーやアドソンを使います。
徐々に深く入っていく際、筋鈎、電気メスの先を長くして調整。
後方系アプローチと前方系アプローチの大きな違いは展開の際に、筋肉を切るか否かです。
後方系アプローチでは大殿筋、外旋六筋(梨状筋・上双子筋・内閉鎖筋・下双子筋・外閉鎖筋・大腿方形筋の近位部)を切開します。
細かく言うと、この内どの筋肉を残すかによって名前が変わってきます。
器械出しとしては切開した後で閉創時にわからなくならないように糸で牽引する可能性を覚えておきましょう。
その際には、1号や1-0などの太い糸を使い、モスキートで把持しておきます。
骨切りと臼蓋側の処理
骨切り:大腿骨頚部を切断
自分の経験ではレシプロを使う先生が多いですが、中にはオシュレーターを使う先生もいるので事前に確認しましょう。
レシプロやオシュの刃は高いので要注意です…。
切り出した骨頭を取り出しますが、うまく取り出せないときは骨頭抜去器などを使用します。
臼蓋側の処理
ここにくるといろいろなレトラクターを使い始めます。
大転子・小転子レトラクター、スピッツホーマンを使用。
臼蓋窩のリーミングは徐々にサイズを上げて、術前計画書に沿った予定サイズを目指します。
このときのリーミングはテキパキと付け替える必要があるので、初めてのときは事前に付け替えの練習をしておくと良いと思います。
臼蓋側インプラントの挿入と固定
臼蓋を予定サイズまでリーミング後はカップのトライアルをします。
その後インプラントを挿入し、固定していきます。インプラント挿入の前には基本的に洗浄するので、その準備もしておくと良いです。
インプラントの固定
洗浄後、インプラントを挿入してスクリューで固定します。
THAの場合はドリルやスクリューを把持する器械がちょっと特殊な形をしている場合があります。
他のプレート固定の手術だと、ドリルもスクリューを把持する器械もまっすぐが基本ですが、THAの場合は先端が曲がるようになっていることがあります。
臼蓋の形に合わせるために、曲がる必要があるのでしょうが、スクリューをどこで把持するのかが難しかったりします。
言葉だと難しいですが、スクリューのヘッド自体をかみ込ませるのか、スクリューの首の部分をかむのかという感じです…。(これで伝わるでしょうか…?)
ここで一旦、ライナーのトライアルをカップに入れておきます。
大腿骨側の処理
次に大腿骨側の処理に移ります。基本的にはBHAと同じで以下の工程になります。
- 箱ノミ
- スターターリーマー
- ガリガリくん(他の施設でこの呼び名かはわかりません)
- ガリガリくんはリーマーで削った部分を滑らかにして、ラスピングしやすいようにするために用いていると思います。
- ラスピング(サイズアップしながら調整)
- ここのサイズアップするときもかなり手早くする必要があるので、練習が必要です。
- ついでに言うと、血液でかなり滑りやすくなっているので落とさないように要注意!
予定サイズまで到達したら、ラスピングで使っていたトライアルのステムはそのままにして、インプラント全体の調整を行います。
トライアルのステムはネックと分かれているため、予定していたネックのトライアルと組み合わてヘッドをつけて調整します。
このとき、外しやすいようにガーゼを一枚かませたりするので、先輩に聞いてみてください。
全体のトライアルで足の長さ、脱臼のしやすさを確認
スタンダードのネックでトライアルを行い、足の長さを調整。
脱臼しやすいときにはネックをハイオフにしたりします。
ステムのサイズを変えるときもあるので、調整をしている間にワンサイズ上のトライアルステムも用意しておきましょう。
問題なければ洗浄後して、インプラントを入れます。
インプラント挿入と閉創
まずはライナーを本物に取り替えて、ステムを入れて、ヘッドを打ち込みます。
多くの場合でトライアルと、本物(インプラント)の打ち込み器は違う場合が多いので、ここも確認しておきましょう。
インプラントを入れたあとは洗浄して、ドレーン、閉創になります。
ドレーンの有無は施設によって変わる可能性が大です。
閉創は抗菌薬入りのバイクリルプラスなどを使っている場合が多いんじゃないかなと思います。
ルーチンで使用している糸針があるはずなので、聞いてみてください。
まとめ:THA(人工股関節全置換術)の基本的な流れ
1. 準備の重要性
- 手順の理解と器械の順番配置が大切
- スピーディーな器械出しで手術の流れが良くなる
工夫のポイント
レトラクター類を整理し、向きを統一
先端形状を覚えるとスムーズに対応可能
2. 消毒とドレーピング
- 消毒剤は施設によって異なるため事前確認が必要
- ドレーピングの流れは医師ごとに違いがある
- アプローチ方法
- 後方系アプローチ → 側臥位
- 前方系アプローチ → 仰臥位(両足を消毒)
3. 展開(後方系アプローチの場合)
- 使用する器械
- コウピン、電気メスメス、メッチェン、エレバ
- 開創器(ゲルピー・アドソン)
- 筋肉の処理
- 大殿筋・外旋六筋を切開(どの筋肉を残すかで名称が変わる)
- 切開後は糸で牽引(1号や1-0の太い糸+モスキート)
4. 骨切りと臼蓋側の処理
- 骨切り
- 大腿骨頚部を切断
- レシプロ or オシュレーター(事前確認が必要)
- 臼蓋側の処理
- レトラクター(大転子・小転子・スピッツホーマン)を使用
- 臼蓋窩のリーミング(術前計画書のサイズまで)
5. 臼蓋側インプラントの挿入と固定
- インプラント挿入前
- トライアルカップ装着
- 洗浄の準備
- 固定
- インプラント挿入後、スクリューで固定
- THA専用のドリルやスクリュー器械は形状が特殊
6. 大腿骨側の処理
- 使用する器械
- 箱ノミ、スターターリーマー、ガリガリくん(リーミング後の滑らか加工)
- ラスピング(サイズアップ調整)
- 滑りやすいので器械を落とさないよう注意
- 予定サイズまで到達したらトライアルステムで調整
7. トライアル調整とインプラント挿入
- トライアル調整
- ステム+ネック+ヘッドで足の長さ・脱臼しやすさを確認
- 必要ならネック変更やステムサイズ変更
- 本番のインプラント挿入
- ライナーを本物に交換
- ステム・ヘッドを挿入し、打ち込み
8. 洗浄・閉創・ドレーン設置
- 洗浄後、ドレーン設置(施設による)
- 閉創
- 抗菌薬入りのバイクリルプラス使用が多い
- ルーチンの糸針を確認
以上です。看護師くらげでした。
簡単に手術の流れを説明しましたが、施設や執刀医によって順番や細かい部分が変わる可能性は十分あります。
もし間違いや補足があれば教えていただけると嬉しいです。